山本周五郎「青竹」
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No.00137
慶長6年、本多忠勝が近江、佐和山城の井伊直政を訪ねる。共に、徳川四将の一人。
滞在も四五日、琵琶湖に船を浮かべ、伊吹山で猪狩り。また、鈴鹿の山へ遠駆けし
野営の一夜も楽しからずや。やがての出立、城中で催す別れの宴。
「関ヶ原の折、島津の阿多豊後を討ちとめた若者は、この中におるか。」
本多忠勝が、ふと思い出したように尋ねる。井伊直政には、誰のことやら。
己の家臣が手柄なら、いくら本多忠勝が相手とて知らぬは家の恥。
「阿多豊後を討つ時、そなたは其処に見ておったか。」
井伊直政は、それとはなしに探りを入れた後、特長を聞きだそうとする。
「四半の布に墨絵で、かぶらの絵を描いた珍しい差物に、思わず馬を返した時、
まさに豊後へ一槍つけたところであった。その戦いぶり今でもありありと。」
井伊直政は、聞いて安堵を得る。その差者は一人しかおらぬ。
「そのことで合点がゆかぬ。当人に会って確かめてみたいのだが。」と本多忠勝。
口数少なく、気質恬淡。すべてに控え目、さしたる働きもない。余吾源七郎は、
主君、井伊直政に呼ばれて伺候。待ちかねたように本多忠勝が招き寄せた。
確か竹槍のように見えたが、と忠勝。井伊殿が竹槍などを使わす、とは思えず。
深くつけた槍を抜くことは至難にて、使い捨ての竹槍を複数、携えと答える。
褒章、自らの短剣を与え、翌朝も機嫌よく出立した本多忠勝だが、問題が残された。
他家に明かされた功名、捨てておけず慌てて集めた老臣たちとの評議が開かれる。
事実確認と申告しなかったことの詮議も、滞りなく老臣たちの評議は恩賞である。
一人、異議を唱えた竹岡兵庫、1年も前のことと恩賞も無用と、あいなった。
御前評議のしばらく後、余吾源七郎は竹岡兵庫に粗飯を呈したい、と招待される。
透き通る白い肌、長いまつげの美しき乙女が茶を運び、韻の深き声で作法も正しい。
その後、娘を見ることはなかったが馳走に談笑、竹岡兵庫は機嫌もよろしい。
「嫁をとらぬか。五人の娘の中でも、あれは自慢の娘である。」「お断り申し上げます。」
三百石の主人に仕える余吾源七郎、千石老臣の娘をめとれば女房のゆかりで出世。
せっかくですが、ときっぱり。評判の良い源七郎に、やがての縁談。すべて断る始末。
元和元年、大坂夏の陣。武将、余吾源七郎は差物、墨絵のかぶらに数珠を加えている。
苦戦に退去の軍令そむいて多くの兵を失うも、機を見て攻め入り功を成す。
審問に、申し開きさえせず。またもや意見を竹岡兵庫。時の主君、直孝も賛同。
軍令そむくは重科なれど、余吾源七郎の判断で大坂城を攻め落とせた、と。
後日、兵庫が訪れた。まるで、青竹のような男。高く伸び、それを割ったよう、と評す。
今度は嫌とは言わせぬぞ。お旗奉行に出世、嫁をとらせよう。「お断り申し上げます。」
「今より14年前に己の増上慢より、またとなき縁談をお断り申しました。
悔やみましたが、その方はまもなく病で亡くなりました。今でもお声を忘れません。
私の妻は他にはおらず、差物に加えた数珠は生涯の供養にござります。」
「知っておったのか、源七郎。」兵庫、老いの目にはらはら、と。風鈴が咽ぶように鳴った。
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山本周五郎「青竹」 is Posted by freude48 at 08:00
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山本周五郎「青竹」…へ、コメント
山本周五郎さんですか...昔聴いていたラジオ、「今月の本棚」で何回か聴いたこと、思い出しました。あのときのテーマ曲(始まりの曲)いい曲でした(^^♪ ご存知です?今、読ませていただいてて、頭の中に流れました(笑)
・゜゜・(/□\*)・゜ 余吾源七郎゜・
来世に出逢いなば、必ずや娶るべし(´ω`。)グスン
今日は歴史小説ですね。
この主人公は素晴らしいですね。映画になってもいいくらい面白い話です。
昔の武士でもめずらしい人だったのではないでしょうか。☆
いかにも昔の武士らしい、いい話です。
山本周五郎先生の作品、よじょう位しか読んだことがなかったのですが、少し興味が湧きました。
最近やたら自分の苦手な
歴史系が多いんですが
気のせいでしょうか?
ポチっときます。
最近勉強になるので
有難いです。
すごい男性好きな方多いのでは
今日は、なんだか、バタバタしていて忙しい・・・
なんて日に限ってなんと漢字の多い事(^_^;)
苦手な歴史・・・3回も読んでしまった・・・
でも、歴史が苦手な人が上にもいるようで
安心しましたぁ〜
僕、高校時代、日本史を選択していたはずなんですが、やっぱ苦手でした・・。日本人として、もう少し日本の歴史を知っておきたいです。くはー。
すいません(>_<)
今日はとりあえず応援だけ♪
別館も!
こんばんは。【どんきぃ】です♪
いつもブログへの訪問&温かい素敵なコメント
本当にありがとうございます。
歴史的文章が苦手な方も多そうですね^^
ちょっと安心。好きなんですけどねw
人物の想像が出来なくなるんです・・・
多分有名な方を題材にされたのでしょうが^^
またお邪魔させて頂きますねぇ☆
感謝の応援ポチ←済です♪
私も歴史が苦手な、1人です・・・
3回読みましたが、もう1回頑張ります!!
あれれ?
絵文字が使えない。。。
応援凸
むむむ。
ちょいとお馬鹿なあたしにはむつかしい。
歴史、地理、などの社会系は苦手でした。
いや、今も苦手です。
応援して帰ります。
こんばんわー♪
いつも更新前にも関わらず、応援して頂きましてありがとうございます!
いい話ですね〜♪
純愛です。
私もこんな風に殿方に愛されたら幸せでしょうね。
天国でにっこり微笑んでしまいそうです!
では、また遊びに来ますね♪
応援!
いつもいつも、ありがとうございます**
それにしても、知識が豊富ですね〜!!
私はFREUDEさんの記事で時々読めない漢字があったりしてまだまだ勉強不足を感じます〜〜^^;
ポチッと♪
コメントありがとうございますねー!
お返事も一緒にコメントにして残します〜。
いつも感心させられますよ!
知識も広いですし!
今日のは歴史物だったんですね〜。
しかし、なぜこんなに文を毎日書けるのですか・・・?w
僕には真似できません!
今日もポチッと〜!
MM親方さん
「今月の本棚」はNHK第1でしょうか
たぶん聞いたことがある、と思います
私は最近まで、山本周五郎氏の作品を知らず、今では
悔しくさえ思います
現在、25冊の蔵書ですが開くたびに感銘を与えてくれること
欠かしません
男の読み物ですね…いろんな意味で!
にゃおさん
来世があるならば、是が非でも娶って欲しいと思います
引きずることがこの世かも知れません
さっき、位牌に換えた水を置きながら、
「この世は生きているもののものだね」と
心でつぶやいてしまいました^^
たくたくろ さん
武士の世界で、このような人が多かったのか、どうか
分かりませんが山本周五郎が生きた時代は、このような
潔さが政治的に、都合の良かった時代背景も否めません
桃源児 さん
山本周五郎先生のファンです
蔵書が今、25冊になりました
この方の作品を紐解く限り、ペンで食べて行こうなどと
思えません
閉じたあとの感動は、伴って舌を巻くこと必ずです
ミナト さん
歴史系が苦手なのですか?
私は読む方なら好きなのですが、書く方は時間がかかって
しまうため、量産の自信がありません
でも、また来て下さいね!
miho さん
作者の生きた戦前は、このような人間像がもてはやされた
背景もあるでしょう
男にとって都合のいい作品も少なくありませんね
ステッピー さん
ご多忙の中を、わざわざのお越し、感謝いたします
まァ、上がってお茶でもいかがですか?
漢字で書かないと、アラビア文字では読めませんでしょ?
もっとも書けませんが…A^^);
まーさん
日本史を専攻されていたんですか
でも誰しも、得意不得意はありますしね
無理に知らなくても、味わうことができれば
そこに、ときめきを感じます
たけもと農場の新米さん
ご多忙のところ、連日にも感謝いたします
今日も作業、お疲れ様でした
またのお越しを、心待ちにしています
【どんきぃ】さん
こちらこそ、いつも感謝しております
歴史的人物に対する、人の知識においても
断片的なものではなかろうか、と思っています
本多忠勝は織田信長の家臣から、徳川家に
付いた訳ですが、井伊家は続くために
名前までは覚えにくいですね
安政の大獄、桜田門外の変で有名な、井伊直弼は
すぐに出てきますけど…
HIRO さん
今日は歴史の苦手な方が多くて、実は安心して
いるんですよ
だって、アラがばれずに済むでしょ?^^
また、来て下さいね!
いついつママ さん
成績なら女子も男子も変わらないのに、
大人になると、とたんに男性の方が社会系に
強くなりますね^^
私は地理が好きなので、地名とか位置関係に
とても興味があります
NIKIandNORA☆ さん
たぶん、それ以上に愛してくれる男性が、
そのうちに現れそうですね
また、応援させてください
リラコ さん
浅く広い、雑駁な知識が自慢ではありますが、
使えませんでして…A^^);
漢字について、書く方は変換するだけですが
読めない漢字って結構ありますよね
スタさん
こちらこそ、ご紹介いただき、恐縮です
文章は、出てくるのですが画像にいつも
苦労しているんです
スタさんはいいですよね^^
彼女は、プロですか? あんなイラストが使えて
羨ましいです!
こんにちは!本多忠勝、この人物、こすからい生き方が
あまり好きではありません。でもこの時代好き!ポチ!
山本周五郎「青竹」…へ、コメント(400字以内)
コメントのご記入、ありがとうございました